
女性の泌尿器疾患
女性の泌尿器疾患
こんな痛みや症状でお困りではないですか?
膀胱炎
急性膀胱炎は、女性に多い疾患です。大腸菌などの腸内細菌が逆行性に尿道経由で膀胱内へ入り、膀胱内で増殖し、炎症を起こしたものです。違和感、頻尿、排尿痛、血尿などの症状がでます。罹患率は高く、女性の方で一生ならない方は珍しいくらいです。尿道が男性に比べ約4cmと短いので、構造上仕方ないことでもあります。飲水、抗生剤の内服で治る方が大半です。軽度の場合は自然に治ることもありますが、ひどくなると、細菌が腎臓まで到達して、腎盂炎となり、高熱、悪寒、腰痛等が出現することもあります。早めの対処をお勧めします。
繰り返す方は、何度も抗生剤を飲むことにより、耐性菌ができることがあります。尿の培養検査で判断しますが、治療に難渋する場合もあります。
繰り返す方の中には、膀胱機能が悪く、常に残尿が多い方もおられますので、超音波検査で他に原因がないか確認した方がいいこともあります。
抗生剤で細菌がなくなっても、違和感などの症状が残ることもあります。自覚症状の改善まで、時間差が生じることもあり、こういった時には、漢方薬で経過を見ることもあります。
腎盂腎炎(じんうじんえん)
尿路とは腎臓で作られた尿が体外へ流れていく通路のことであり、腎盂・尿管・膀胱・尿道のことを言います。尿路感染症とは、対外から侵入した細菌が膀胱・腎盂などで増殖し、害を及ぼす疾患です。尿道に続く膀胱で炎症を起こすと、膀胱炎となり、さらに細菌が逆行性に尿管から腎盂まで到達し、炎症を起こすと腎盂炎になります。急性腎盂腎炎は、悪寒・寒気などを伴う高熱、腰背部痛、嘔気・嘔吐などの全身症状が出ます。これらの症状が出れば、速やかに受診してください。尿検査、血液検査、画像検査等で、診断を行い、抗生剤点滴による治療を行います。早期の場合は、数日の外来加療で改善しますが、治療が遅れ、病状が進むと、入院加療が必要となります。
尿道カテーテル留置中の腎盂腎炎、リウマチ・膠原病などで免疫抑制剤内服中に腎盂腎炎を起こした場合は、重症化する恐れがあり、入院加療をお勧めいたします。尿管結石に合併した急性腎盂腎炎の場合は、緊急処置(尿管ステント留置)を要することが多く、入院加療が必要です。
いずれにせよ、治療が遅れると、菌血症・敗血症へと悪化し、入院しても治療が長引くこともあり、高齢の方など、中には死亡される方もあります。
予防方法は、陰部の細菌を減らすことで、なるべく尿道周囲を清潔に保つことが重要です。大腸菌など大腸からの便由来の細菌がほとんどですので、入浴やシャワー、排便後のシャワー洗浄などが有効です。寝たきりでパッド使用している方は、汚染した場合は速やかな交換が必要です。水分も多めにとり、なるべく規則正しい生活を心がけ、過労に注意してください。
過活動膀胱
急に尿意が強くなってしまう(尿意切迫感)、トイレまで間に合わなくて漏らしてしまう(切迫性尿失禁)などの困った症状です。頻尿を合併することが多く、寒い時期に悪くなりやすく、比較的女性に多い疾患です。
膀胱に尿が貯まって、膀胱の壁が広がった時に、膀胱内で神経から筋肉へのの伝わりが強くなりすぎたり、脳からの抑制が弱くなったりすることが要因で、自分の意思とは関係なく漏れてしまう病態(不随意収縮)です。尿は我慢できそうなんですが、実際に我慢できるのは、尿道括約筋という膀胱の出口のすぐ下の筋肉であり、膀胱自体の不随意収縮(反射排尿)は、自分の意思では調節できません。
脳梗塞後遺症、パーキンソン病などの神経障害のある場合、男性では前立腺肥大症など排尿障害で、膀胱が過緊張状態の場合、女性では出産・加齢などで、骨盤底筋が弱くなった場合などが主な原因とされていますが、特定できないことも多いです。
日本では800~1000万人程度(40歳以上の7人に1人)いると推測されておりますが、長年パッドを使用して我慢している方、諦めている方が多いようです。超音波など簡単な検査で診断でき、効果の高い、副作用の少ない薬もあります。生活習慣の改善や膀胱訓練などで改善することも多く、内服薬で、多くの方はよくなりますので、漏れが気になって外出を控えるなどしている方は、ぜひ泌尿器科へ受診しましょう。
神経因性膀胱
あまり有名ではありませんが、男女ともに見られる、比較的頻度の多い疾患です。
脳↔脊髄↔膀胱を通る神経がいずれかの部位で障害を来し、排尿障害、蓄尿障害などを来たす疾患です。
脳梗塞、脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害、脊髄損傷、パーキンソン病、直腸癌・子宮癌などの術後、高度の前立腺肥大症、加齢、抗精神病薬による副作用など、多くの原因があります。
排尿障害には、排尿困難、残尿増加、頻尿、慢性膀胱炎、尿意低下などがあります。膀胱炎がひどくなると腎盂腎炎を起こしやすくなり、熱発を繰り返すこともあります。残尿増加がひどくなると、水腎症、腎不全などへ進行することもあります。尿道を広げる薬、膀胱の排尿力を手助けする薬などを用いますが、限度以上に悪くなると、合併症予防のため、自己導尿や尿道バルーンカテーテルを留置せざるを得ないこともあります。
蓄尿障害には、尿漏れ、頻尿などがあります。膀胱の排尿を抑制する薬を用いますが、疾患によっては効果が乏しく、パッド、紙おむつなどでの対処が必要となります。
薬剤性のものは原因薬剤の中止で改善しますが、それ以外の場合は、改善の見込みはあまりなく、なるべく悪化させないこと、合併症をなるべく防ぐことが目標となり、薬、自己導尿、尿道バルーンカテーテル管理などが必要となります。高齢の方などでは、初期の頃は、あまり自分でも気付かず、かなり悪化してから、見つかることも多いので、気になる症状があれば、早めの受診をお勧めします。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、重い物を持った時、立ち上がった時など、腹部に圧力がかかった時に尿が漏れてしまう症状です。骨盤の底にあり、膀胱・子宮・直腸が下がらないように支えている筋肉群のことを骨盤底筋と言います。この骨盤底筋が緩むと、尿道・膣の締りが悪くなり、尿漏れを起こしやすくなります。特に女性の場合は、妊娠、出産、加齢などにより悪化します。
治療としては、①骨盤底筋体操、②内服薬、③尿失禁治療器などを行います。ひどい場合は、④手術療法もあります。
①骨盤底筋体操:まずは仰向けに寝て、足を肩幅に開き、膝を少したてて、リラックスします。息を吸って、膣・肛門を5秒間締めて、ゆっくり息をはいて力を抜きます。これを5回繰り返す。この運動を1日10セット行うことが目安です。1日の中でなるべく分散して行います。慣れてくれば、入浴中、座っているとき、台所仕事中など、生活習慣に取り入れていきましょう。個人差はありますが、効果が得られるまで2-3か月はかかります。筋トレと同じで、地味な努力が必要です。
②内服薬:膀胱の出口を締める薬などを使用します。
③尿失禁治療器:当院では「ペリネスタ」を採用しております(保険診療可能)。
「ペリネスタ」とは、干渉低周波電流を用い、電極を下腹部と臀部に貼り付けて、体内で低周波を発生させます。骨盤神経の反射を抑え、骨盤底筋を刺激することで、頻尿・尿失禁を改善させる電気刺激装置です。簡単に言えば、なかなか体操が続けられない、効果が乏しい場合に、機械を使って、筋肉をしっかりさせ、神経を鈍くして、楽をして?もれにくくする治療です。
リクライニングチェアにゆったり座ってもらい、着衣のままパッドを貼って、1回20分で終了です。最初は3週間に6回まで、以後は2週間に1回を目途に行います。電気マッサージ機のような軽い刺激です。約7割の有効率があります。男性で前立腺全摘後に尿失禁が続く方などにも有効です。
④手術:重度の腹圧性尿失禁の方には、尿道を特殊なテープで支える手術(TVT手術、TOT手術など)もあります。手術可能な病院が比較的少なく、必要な方はご紹介いたします。
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