
男性の泌尿器疾患
男性の泌尿器疾患
前立腺肥大症は、泌尿器科の中では、頻度の多い疾患です。前立腺は膀胱の出口にあり、尿道を取り囲む男性特有の臓器です。栗のみサイズであり、精液の一部を産生しています。加齢とともに大きくなることが多く、尿道を周囲から圧迫し、尿道が狭くなることにより、尿の勢いが弱くなる(尿勢低下)、排尿に時間がかかる(遷延性排尿)、尿が出にくくなる(排尿困難)、尿が出し切れなくなる(残尿増加、残尿感)、尿が近くなる(頻尿、夜間頻尿)などの症状が出てきます。さらに悪化して全く尿が出せなくなる(尿閉)こともあり、その際は緊急処置が必要となります。また、膀胱に負担がかかることにより、膀胱の筋肉・神経に影響が出て、尿をしっかり貯められない、我慢すると漏れてしまう(過活動膀胱)などの症状を合併することも増えてきます。
問診、尿検査、超音波検査による前立腺の大きさの測定、残尿量の測定、尿流量測定等で行い、血液検査(PSA、前立腺がんの腫瘍マーカー)で前立腺がんとの鑑別を行います。
内服薬による治療が主体となります。尿道を広げる薬、前立腺を小さくする薬など、症状、程度に応じて、調節を行っていきます。高血圧や糖尿病の薬と同じように、長期間の継続を要することが多いです。内服治療の効果が乏しい方、高度の前立腺肥大症の方は、手術療法が必要となります。電気メス、レーザーなどの内視鏡手術により、尿道の内側から、肥大した腺腫を切除、蒸散、くり抜くなどにより、尿道を広げることで排尿状態を改善させることができます。
手術療法はタイミングが大事となってきます。本来手術が最適と思われても、何とか薬で様子をみたいとの方も多いですが、超高齢となり、体力低下、合併症の増加などで、手術自体が困難になってしまった場合は、膀胱へカテーテルを留置せざるを得ないことになります。一生カテーテルをつけた状態での生活となり、定期交換も毎月必要となり、熱発、出血、閉塞などの合併症もあり、仕方がないとはいえ、大変です。適切なタイミングで適切な治療を行うことが大事です。
急性前立腺炎の多くは、大腸菌などの腸内細菌が、体外から尿道を通って前立腺に入り、増殖、感染したものです。排尿痛、残尿感、頻尿、排尿困難などの症状が出現し、悪化すると高熱を来します。急速に悪化し、敗血症(全身へ菌が広がる状態)へ至ることもありますので、早期の抗生剤治療が必要です。高熱が遷延する場合や、倦怠感が強い場合、尿閉を合併する場合などは、入院加療を要することもあります。
慢性前立腺炎は、ドライバーさん、デスクワークの方など、長時間座ったまま、姿勢をなかなか変えられない方などに多い疾患です。下半身から心臓に戻る、血液・リンパ液の流れは前立腺、肛門周囲に多く、流れが滞ることが一因と言われております。股間の不快感、射精痛、精液に血が混じるなどの症状が現れます。診断は問診、尿検査、超音波検査、直腸診などで行います。抗生物質、症状を緩和する薬などの内服薬が主体ですが、前立腺マッサージ、食事指導(過度の飲酒を控える、刺激物を控える)、生活指導(座り続けないように姿勢を適宜変える、入浴時に鼠径部のリンパマッサージをする、精液を貯めすぎない、スポーツタイプの自転車を控えるなど)を組み合わせて行います。
精巣上体とは、精巣の上にあり、精巣で作られた精子の通り道であり、精子を蓄え、成熟を待つ場所です。精巣→精巣上体→精管→精嚢と成熟した精子が運ばれ、前立腺で作られた前立腺液と混じって、精液となり、前立腺の裏にある精嚢で蓄えられます。ここに炎症を起こすと、腫脹、圧痛、発赤、熱発等が起こります。抗生剤、冷却などで治療します。急速に悪化した場合は、精巣上体が破れて、陰嚢内に膿が貯まり、陰嚢皮膚が破れたりすることもあります。あまり有名ではありませんが、比較的多い病気であり、対応が遅れると、入院加療を要することもあります。
腎臓、尿管、膀胱、尿道と尿の通路に結石ができる疾患です。比較的頻度が高い疾患であり、約5%の方が罹患し、男性が女性の約3倍多いです。腎臓にできた結石が尿管に下降した場合に突然の激痛、血尿、嘔吐などを生じることがあります。これは結石が引っかかることで尿の流れが突然悪くなり、腎盂内圧が急上昇することが原因です。
診断は尿検査、画像検査(レントゲン、超音波、CTなど)で行います。自然排石可能な場合は、鎮痛剤、排石促進剤、飲水などで経過観察します。排石確認が大事であり、痛みがなくなっても尿管内に長期結石が残存し、知らない間に腎機能が悪化することもまれにあります。高齢男性で、前立腺肥大症など尿道の狭い方は、膀胱内に長期間結石が残存し、大きくなってから、再度痛み、血尿などで気付かれることもあります。
8mm以上と大きく、自然排石困難と判断した場合は、経尿道的尿管結石砕石術(TUL)や体外衝撃波破砕術(ESWL)などの手術療法を要することがあります。尿管結石による腎盂炎を併発した場合は、急速に悪化することがあり、尿管ステント留置など緊急処置を要することもあります。
シュウ酸カルシウム結石が9割程度、尿酸結石が1割弱であり、5年再発率も約50%と高めです。シュウ酸カルシウム結石などは溶かす薬はありませんが、尿酸結石や一部の感染結石などは薬で溶けることもあります。結石ができる原因は大半が不明ですが、多発している場合、何度も再発している場合は、何らかの原因が隠れていることもあり、精査が必要です。場合によっては、再発予防薬を飲んだり、生活習慣を見直したり、原疾患の治療を要することもあります。
最近では、高齢女性など、骨粗鬆症でカルシウムを増やす薬を長期飲んでいる方にできる薬剤性の結石も増えている印象です。また、長期尿道バルーンカテーテルを留置している方にも、膀胱結石ができることが多く、トラブルの一因となります。
中高年男性で、「なんとなくだるい」「活力がなくなってきた」「突然のほてり・汗がでる」などの症状が続けば、男性更年期障害の恐れがあります。女性の更年期障害は、閉経前後(45-55歳)の急激に女性ホルモン(エストロゲン)が減少する時期に起こり、徐々に慣れていきます。女性に対するホルモン補充療法は広く普及しています。
男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は中年以降、徐々に減少していきます。個人差はありますが、40歳以降、どの年代でも起こる可能性があります。男性に対するホルモン補充療法はあまり普及していません。
男性ホルモンの低下により、様々な症状が現れます。
他、男性ホルモンが低いことが、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、心血管疾患に関連することが分かっており、寿命が短くなるなどの報告もあります。
気になる方は、あらかじめ質問票を印刷して、点数をつけて、持参してもらえれば、診察がスムーズに行えます。
質問票でうつ病との鑑別を行い、血液検査で、男性ホルモン値を測定し、低い場合は、男性ホルモン補充療法(3-4週毎の注射)を行います。それほどでもない場合は、漢方薬、ED治療薬などで治療を行います。
多血症などの副作用があり、定期的な採血が必要です。睡眠時無呼吸症候群の方は悪化させるのでホルモン補充療法はできません。ワーファリン内服中の方は減量必要となることがあります。当然ですが、スポーツ大会などでのドーピング禁止薬です。
血精液症は精液に血液が混入した病態であり、薄いピンク色、赤色、褐色など出血の時期、射精のタイミングにより、色調は様々です。射精時に気付くため、びっくりして、心配で来院される方が多いですが、心配ない場合がほとんどです。
精液は精巣で作られた精子、前立腺・精嚢で作られた分泌物が混ざり、いわゆる精液となり、精嚢に貯められており、射精時に精嚢から押し出され、前立腺・尿道を通って、体外へ排出されます。精嚢・前立腺からの何らかの出血が原因です。炎症や癌による出血のこともありますが、大半は原因不明であり、微少な血管からの一過性の出血だろうと考えられています。
検査は、まず尿検査にて、血尿・炎症がないか調べます。場合により、触診により、陰嚢内容などの確認、エコーにて前立腺等の確認、中高年の方には、血液検査でPSA検査(前立腺癌の有無の確認)を行うことがあります。ただ前立腺癌が見つかる場合はほとんどありません。
一般的には、1-2ヶ月程度で自然治癒することが多いです。長引く場合は止血剤の投与、炎症を合併している場合は、抗生剤や抗炎症薬を投与して、様子を見ます。なかなか改善しない時、心配な場合などは受診して下さい。
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